眠れないのならいっそ朝まで話をしよう

まだ十代の頃、ある施設に入っていたことがある。そこはスパルタ式のヨットスクールでも、窓に鉄格子のはまった閉鎖病棟でもなかったが、出入りは厳重に管理され、口にするものはきちんと管理されていた。暴力性のある人はいなかったが、何かしら心に傷を負っているような人が多かった。私の場合は向精神薬など、薬の過剰摂取癖があったのだが、その施設に入ることで服薬もコントロールされ、少しずつだが健康を取り戻していった。それでもたまに、ほんの些細な出来事からヒステリー状態になったり、逆にベッドがら起きられないくらい元気がなくなることもあり、施設の人に心配をかけた。

目覚め爽快

施設の人は、アメリカンフットボールでもやっていそうな屈強な男の人や、明るくて身のこなしの軽い女の人など、割と年の近そうなスタッフが多かった。つかず離れずと言った感じで私たちを見守り、何かこちらが求めれば、さりげなく手を差し伸べてくれるようになっていた。施設に反抗的だった人も次第に施設の居心地を気に入り、スタッフとも打ち解けていく。私もそうだった。

第14章「レム睡眠」

ある時、どうしても昔のことを思い出してしまい、消灯時間を過ぎても眠れない時があった。リビングに行くと夜勤のスタッフが何か帳簿のようなものを付けていたが、私に気づくと話しかけてくれた。誰かと話したいわけではなかったのだが、スタッフの方から、眠れないのならいっそ朝まで話をしようと提案してくれ、他愛ない話を朝まで続けた。

脳内物質セロトニン

1つのことに執着せず他に気持ちを向けるということができた私は自信がつき、夜も眠れるようになり、それが施設を出るきっかけになったと後でわかったのだが、その経験は今でも私の役に立っていると思う。